前回に引き続き、今回の民法改正における重要な改正点の1つである、消滅時効に関する改正事項、具体的には、①不法行為による損害賠償請求権の消滅時効及び②人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効を取り扱う。, 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。, ①については、改正前民法においては、不法行為の時から20年という期間制限の法的性質が条文上明らかではなかったところ、判例(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁)は、これを除斥期間と解していた。今回の改正では、不法行為の時から20年という期間制限の法的性質を消滅時効である旨明記し、判例法理を変更することとした。, このことにより、時効の中断が可能になる等、今回の改正が被害者の権利救済に資する場面も出てくることとなる。, 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。, 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。, ②について、改正後167条は、「権利を行使できる時から10年間行使しないとき」(改正後166条2号)に当該債権の消滅時効が完成するという定めについて、当該債権が「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」であった場合について、改正後166条2号の「10年間」を「20年間」に伸長するものである。, また、改正後724条の2は、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」に完成するという定め(改正後724条1号)について、当該損害賠償請求権が「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権」であった場合について、改正後724条1号の「3年間」を「5年間」に伸長するものである。, これらの改正は、生命や身体の保護法益としての重要性に鑑み、消滅時効の期間を伸長したものとなる。これらの改正により、生命・身体が侵害されたことによる損害賠償請求権については、債務不履行又は不法行為のいずれの構成によっても、消滅時効の期間の点では実質的には差異がないこととなる。, (Keywords)消滅時効、時効期間、起算点、不法行為、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権、民法改正. 短期消滅時効を考えるとき重要なのは、時効の起算点(起算日)です。いつから時効が進行するか、ということです。 不法行為による損害賠償の請求権の短期消滅時効が進行するのは、「損害および加害者を知った時から」です (新民法724条1号) 。 借金には「消滅時効」というものがあります。消滅という名の通り、時効が成立した場合、借金の支払義務が消えて無くなってしまうのが「消滅時効」です。その消滅時効に関するルールを定めた法律である民法の債権法分野が、このたび抜本的に改正され、2020年4月より改正法が施行されます。 ①職業別の短期消滅時効の見直し 時効期間と起算点の見直し(シンプルに統一化) ②生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間を長期化する特則の新設 不法行為債権に関する長期20年の期間制限を除斥期間とする解釈(判例)の見直し 旧民法724条では、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。 医療訴訟の時効は、債務不履行の場合10年、不法行為の場合は3年ということが分かりました。しかし、時効の起算点(起算日)はいつからカウントすれば良いのでしょう。 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効. Copyright © 2020 Nakamura & Partners All Rights Reserved. 不法行為による損害賠償請求権についてもこれまで同様に考える。 賠償請求権を行使するには、 ・ 不法行為による損害 ・ 不法行為を働いた加害者 の両方を知る必要がある。 これらを知った時点が消滅時効の起算点となる。 消滅時効は債権の場合基本的に、権利が行使できる時から5年間、行使できる時から20年とされる。しかし不法行為による損害賠償請求権や、人の生命・身体への侵害があった場合には別の定めに従うことになる。このページではその他短期消滅時効の定め等にも言及する。 ただし、例外もある。たとえば民法は、①不法行為にもとづく損害賠償請求権について、3年の消滅時効の起算点を、被害者等が「損害及び加害者を知った時」であると定める(724条前段。20年の期間制限の起算点は「不法行為の時」―同条後段)。 (消滅時効に関する改正事項) 前回に引き続き、今回の民法改正における重要な改正点の1つである、消滅時効に関する改正事項、具体的には、①不法行為による損害賠償請求権の消滅時効及び②人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効を取り扱う。 時効の起算点の考え方. 民法166条1項は、消滅時効の起算点を「権利を行使することができる時」であると定める。消滅時効は権利不行使の状態が継続することを事実的基礎として認められるものであるから、いまだ権利が行使できる状態になっていない時に消滅時効が進行するのは適当でないからである。, 「権利を行使することができる時」とは、権利行使について法律上の障害がなくなった時を意味するものと解されている。たとえば、履行期限の未到来は法律上の障害であるから期限が到来するまでは消滅時効の進行は開始しないが、権利者の病気・不在といった場合は法律上の障害ではなく事実上の障害であるので時効の進行を妨げない。, また、権利者が権利の存在や権利を行使しうることを知らなかったとしても、消滅時効は進行する(大判昭12.9.17)。, 制限行為能力者に法定代理人が存在しない場合にも消滅時効は進行するが、その場合には時効の完成が一定期間猶予される時効の停止の制度がある(158条参照)。, 期限(始期)が付いている債権、停止条件付きの債権は、それぞれ期限到来の時、条件成就の時に法律上の障害がなくなるので、その時から消滅時効が進行する。, 不確定期限の場合であっても、債務者が期限の到来を知ったかどうかにかかわらず、期限到来の時から時効が進行する。履行遅滞となる時期が債務者が期限の到来を知った時とされている(412条2項)のとは異なることに注意を要する。, なお、始期付権利・停止条件付権利の目的物を第三者が占有する場合、第三者のための取得時効は、消滅時効とは無関係に、占有開始の時点から進行する。そのため、始期付権利・停止条件付権利の権利者は、取得時効を中断するために、いつでも占有者に対して権利の承認を求めることができる(166条2項)。, 債権の消滅時効の起算点と債務者が履行遅滞に陥る時期とは、必ずしも同じ時点であるとはかぎらない。権利の種類によっては、それぞれ異なる時点となることもある。, 確定期限付き債権における消滅時効の起算点と履行遅滞の時期はともに期限到来の時であるが(412条1項)、不確定期限付き債権における履行遅滞の時期は債務者が期限の到来を知った時である(同条2項)。, 期限の定めのない債権の場合、消滅時効の起算点は債権成立の時であるが、履行遅滞の時期は債務者が履行の請求を受けた時であると定められている(同条3項)。, なお、不法行為にもとづく損害賠償請求権の3年の時効の起算点は被害者等が損害および加害者を知った時であると定められているが(724条前段)、不法行為の成立と同時に遅滞の責任が生じると解されている。, 売買契約における代金債権のように、債権に同時履行の抗弁権(533条)が付着している場合がある。この場合、債権者は自己の債務の履行を提供することによって相手方に履行を請求することができるのであるから、抗弁権の存在は法律上の障害にはあたらず、したがって履行期から消滅時効が進行する。, 期限の定めのない債権は、いつでも債務者に履行を請求することができるのであるから、原則として債権成立と同時に消滅時効が進行する。契約にもとづいて発生する債権だけでなく、不当利得返還請求権などの法律の規定にもとづいて発生する債権についても同じである。, ただし、例外もある。たとえば民法は、①不法行為にもとづく損害賠償請求権について、3年の消滅時効の起算点を、被害者等が「損害及び加害者を知った時」であると定める(724条前段。20年の期間制限の起算点は「不法行為の時」―同条後段)。, また、②相続回復請求権については、5年の消滅時効の起算点を、相続人等が「相続権を侵害された事実を知った時」と定めている(884条前段。20年の期間制限の起算点は「相続開始の時」―同条後段)。, 不作為債権は債務者が一定の作為をしないこと(例、一定以上の高さの建物を作らない)を内容とする債権であるから、債務者が違反行為をしない間は、債権者が積極的に権利行使する余地はない。そこで、不作為債権においては、違反行為があった時から債務者の責任を追及することができる権利(損害賠償請求権など)の消滅時効が進行すると解されている。, 債務不履行により発生する損害賠償請求権は、本来の履行請求権の拡張ないし内容の変更であって、本来の履行請求権と法的同一性を有するものと考えられる。したがって、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求することができる時からその進行を開始するものと解される(最判平10.4.24―履行不能による損害賠償請求権に関する事案、最判昭35.11.1―契約解除による原状回復義務の履行不能を理由とする損害賠償請求権の消滅時効は解除時から進行する)。, 雇用契約上の付随義務としての安全配慮義務の不履行にもとづく損害賠償請求権も、10年の消滅時効にかかる。安全配慮義務違反による損害賠償請求権は、その損害が発生した時に成立し、同時にその権利を行使することが法律上可能となるのであるから、消滅時効の起算点は損害発生時である。, 炭鉱労務に従事し、じん(塵)肺に罹患した患者らが、雇用者である会社に対して、雇用契約上の安全配慮義務の不履行にもとづく損害賠償を請求した事件。「じん肺に罹患した事実は、その旨の行政上の決定がなければ通常認め難いから、(略)じん肺の所見がある旨の最初の行政上の決定を受けた時に少なくとも損害の一端が発生したものということができる。」しかし、じん肺という病気の特質(進行の有無・程度を医学上確定できない)にかんがみると、「重い決定に相当する病状に基づく損害は、その決定を受けた時に発生し、その時点からその損害賠償請求権を行使することが法律上可能となるものというべきであり、」つまり、「雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、最終の行政上の決定を受けた時から進行する」と判示した。これは、じん肺という病気の実態に即して消滅時効の起算点である損害発生時を遅らせるように配慮するものである。, 割賦払債務に、債務者が1回でも割賦金の支払いを怠ることによって債権者は直ちに残債務全額の支払いを請求することができる旨の特約(期限の利益喪失約款)が付されている場合がある。この場合、1回不払いがあったときに、残額についてどの時点から消滅時効が進行するのかについて見解が分かれる。, 債権者が残額の支払いを請求した時から消滅時効が進行すると主張する説。すなわち、債務者は1回の不履行があっても当然には期限の利益を失わず、したがって各期の割賦金債務につきその弁済期の到来ごとに順次消滅時効が進行するが、債権者が残債務全額の履行を請求する旨の意思表示をした時に期限の利益が消滅し、その時から残債務全額について消滅時効が進行すると考える。判例の立場である(最判昭42.6.23)。, なお、特約の趣旨が、1回の不履行によって債権者の意思表示がなくても債務者は当然に期限の利益を失うという内容である場合には、その不履行の時に残額についての消滅時効が進行する。, 1回の不履行があれば即時に残債務全額についての消滅時効が進行すると主張する説。不履行後は債権者はいつでも残額の支払い請求ができるのであるから、起算点の原則的考え方からすると不履行の時から消滅時効が進行すると解すべきであると主張する。, この見解に立つと、債権者の請求の有無、すなわち期限の利益の有無は、履行遅滞となる時期を左右するが、消滅時効の起算点には影響しないことになる。不履行後に債権者が残額の請求をしないときは、各割賦金債務の弁済期が到来する前に消滅時効が進行するので債務者の利益になる。, 弁済供託は、債務者保護のために、弁済の目的物を供託所に寄託することによりその債務を免れることができるようにする制度である(494条)。, 弁済者(供託者)は、供託をするとその時から供託物の取戻しを請求することができる(496条1項)。この供託物取戻請求権は供託した時から行使することができ、したがってその時から消滅時効が進行するように思える。, しかし、供託者が供託物取戻請求権を行使した場合には供託をしなかったものとみなされるのであるから(同条同項後段)、供託の基礎となった債務につき免責の効果を受ける必要がある間は供託者に同権利の行使を期待することはできず、その消滅時効が供託の時から進行すると解することは債務者保護の趣旨に反すると言える。, そこで判例は、弁済供託における供託物取戻請求権の消滅時効の起算点を、供託の基礎となった債務についてその不存在が確定しあるいは消滅時効が完成するなど、「供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時」であると解している(最大判昭45.7.15、最判平13.11.27)。, 供託物取戻請求権に関する上掲最判昭45.7.15は、「権利ヲ行使スルコトヲ得ル」の意味について、「単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく、さらに権利の性質上、その権利行使が現実に期待のできるものであることをも必要」であるとする。(同旨を説く判例として、自動車損害賠償保障法72条1項前段の規定による請求権に関する最判平8.3.5がある。).